おやじの願い…詩に託して少年に与ふ 高村光太郎この小父さんはぶきようで 少年の声いろがまづいから、 うまい文句やかはゆい唄で みんなをうれしがらせるわけにはゆかない。 そこでお説教を一つやると為よう。 みんな集まつてほん気できけよ。 まづ第一に毎朝起きたら あの高い天を見たまへ。 お天気なら太陽、雨なら雲のゐる処だ。 あそこがみんなの命のもとだ。 いつでもみんなを見てゐてくれるお先祖さまだ。 あの天のやうに行動する、 これがそもそも第一課だ。 えらい人や名高い人にならうとは決してするな。 持つて生まれたものを深くさぐつて強く引き出す人になるんだ。 天からうけたものを天にむくいる人になるんだ。 それが自然と此の世の役に立つ。 窓の前のバラの新芽を吹いてる風が、 ほら、小父さんの言う通りだといつてゐる。 引用:2007年12月24日 根賀源三 |